社会観察雑記帳 -この本この一節⑪- 「民主主義の死に方」 How Democracies Die   通算投稿49回目

-この本この一節⑪-「民主主義の死に方」How Democracies Die


                           2020年3月21日記

 

        「民主主義の死に方」 How Democracies Die
        スティーグル・レビツキー、ダニエル・ジブラット 共著
        著者は両名ともハーバード大教授で世界各国の民主主義の研究者
 
 著者曰く、「トランプ大統領誕生により、民主主義が危険になっていると考え、民主主義が破綻しないようにするため、執筆したもの」としている本

1. 読書のきっかけ
 東京高検検事長の定年延長が、その根拠も、手続きも安倍政権の恣意的な決定(後付けの法解釈変更を理由とした閣議決定)で行われたことの衆議院予算委員会の質疑で、野党共同会派の小川淳也議員が質疑冒頭に紹介した本で、たまたまTV中継視聴でこの本の存在を知り、購入した。
 トランプ、安倍など、今世界で政権トップとなって、敵と味方を色分けしたり、自国第一を唱えたりして政権運営を行っているが、その現象が続くと民主主義が終焉する危険性があることを、過去、現在の歴史的事実を挙げて検証した良書である。

 

2. この一節
 民衆の支持を得る手法、政権トップとなってからの独裁的な運営をめざす手法など、今日本の安倍政権でも行われている手法や事柄に当てはまることがあるが、この一節としては、次の表現を挙げたい。

「はじめに」にある表現
 民主主義が最もうまく機能しより長く生き残るのは、憲法に成文化されていない民主主義の2つの規範によって支えられているとき
 〇相互的寛容 お互い正当なライバルとして受け容れる
 〇自制心   お互い節度をわきまえる

「第5章」にある表現
 民主主義のガードレール=規範が民主主義を支える
 〇対立相手は敵ではない
 〇特権の乱用は避ける

「第9章」にある表現
 民主主義を護る=アメリカの民主主義がうまく機能していた時は、相互的寛容と組織的自制心という2つの規範が当たり前のように存在し、それが陰で支えていた

 

3. その他参考になる記述
(1) 4つの独裁主義的な行動 第1章に記述
① 民主主義のルールを拒否あるいは軽視
② 政治的対立相手の正当性を否定
③ 暴力を許容・促進
④ 対立相手の市民的自由を率先して奪おうとする

 

(2) 民主主義をどうやって破壊するか 第4章に記述
① 審判を抱き込む
ア. 司法制度、法執行機関、諜報機関、規制当局等
イ. 裁判所を支配
② 対戦相手を欠場させる
メディアの買収、実業家、文化人の逮捕、訴訟など
③ ルールを変える
 選挙区、投票制限など

 

*3.の記述は、現下の安倍長期政権で思い当たる、当てはまる事柄が多いと感じるのは私だけでしょうか