農協組織(JAグループ)が組織を挙げて国内農業生産を直接支援してはどうか
2025年10月2日
1.本稿で一番言いたいこと
コメ増産への政策転換、食料安全保障確立機運の高まりなどを受け、今こそ『国内 農業生産維持・振興に向け、JAグループ(地域農協も連合会もグループ会社も)は生産者・生産法人などと連携・協力して、直接的に国内農業生産に携わる取組を施策化し実践していく』ことが、コメ増産、国内農業生産維持に貢献するだけでなく、協同組合であるJAグループの存在価値、必要性を社会にアピールする絶好の機会ではないか。
(1)農協(連合会含む)が農業経営を行いうる法的根拠は、現行農協法第10条2に「組合員又は会員に出資させる組合は、前項の事業のほか、組合員(農業協同組合連合会にあっては、その連合会を直接又は間接に構成する者)の委託を受けて行う農業の経営の事業を併せ行うことができる。」にある。
しかし、連合会の農業参入形態について、現状の農水省との協議では作業受託(斡旋含む)以外はハードルが高いが、担い手の一翼となるべく同意を得るべきである。
(2)既に行われている、ア.地域農協の農業生産支援(作業受託斡旋や農地集積の実質的な実行者など)、イ.全農の生産振興・担い手支援①労働力支援協議会設置(全国6ブロック毎及び全国)による農作業支援パートナー企業との提携等、②91農業の提唱(本業9割、農業1割のサポーター作り)、③モデル実証農場による農協経営モデル作り(施設園芸のゆめファーム、畜産の肥育農場、④県本部単位での農作業受託や次世代育成農場設置、等々の取り組み、ウ.農林中金の融資等金融支援や農辞苑(担い手と受け手の新たな出会いプラットフォーム)の運営などで既に生産支援は着実に実践しているが、社会(特に大都市圏)での認知度は全く低く、社会的アピールは極めて弱い。
(3)今回の提案は、生産者目線に立脚し、生産者の要望(種別・作物別、地域、経営形態・規模等々で異なることを受け止め)に沿ったJAグループとしてできる農業生産支援を地域JA、県域連合会(=全農県本部)、全国連合会(全中・全農・農林中金・JA共済連など)が相互に連携し、一定規模の予算も継続的に確保しつつシステム的に行うことを社会にアピールし、かつ成果をあげることにある。
2.1.を実現するための大前提
(1)既存生産者・法人と地域JA間、地域JAと県域連合会間、連合会間(全中・全農・農林中金・JA共済連など)の相互の信頼関係が絶対的な必要条件となる。
*くれぐれも、連合会、地域JAからの目線で合意に持っていくのではなく、生産者・法人の目線からスタートし、生産者・法人が納得する支援策とすることが重要
(2)全国連(全農・農林中金・JA共済連)は、支援事業としての予算化を行う際、生産者等への経営支援、自らの事業への貢献に加え、広く社会に対する広報の位置づけがあることもふまえ、十分な予算を計画的・継続的に確保することが重要である。
(付)現在、食料安全保障推進財団(鈴木宣弘理事長)が国会に制定を働きかけている、実質的な所得補償制度(新たな交付金として「農地等維持交付金」「農業者経営安定交付金」「主要穀物及び乳製品の緊急時買入れ制度」新設)の実現も不可欠であろう。
3.なぜ、直接農業生産支援にグループ挙げて取り組むのか
(1)耕作放棄地データは、2015年センサスでは424千㌶、2020年センサスから把握項目としては 廃止したが、2024年12月農水省公表「荒廃農地の現状と対策」では2024年の農地面積はピーク(1961年6,086千㌶)から1,810千㌶減り4,273千㌶で、荒廃農地は257千㌶となっている。また、2025年9月農水省公表「地域計画の策定状況(2027年4月末時点)=都道府県別10年後後継者未定の農地面積・割合」では、農用地等面積4,222千㌶のうち将来の受け手が位置付けられていない面積が1,339千㌶と32%にも及び、ブロック別では北海道の9%を除き、東北36%、関東49%、北陸23%、東海43%、近畿31%、中四国60%、九州36%とどのブロックも後継者不足の割合が大きいデータとなっている。
これらのデータから、国内農業生産の担い手不足は既に深刻な事態であり、現状のまま推移すると近い将来国内農業生産は加速度的に衰退することが想定される。
(2)生産者組織である協同組合JAグループには、元々国内農業生産を支える使命があることに加え、戦争・異常気象による農産物収量減、国内物価高、コメ騒動等々から、「食料安全保障」が脚光を浴びている現況下で、国内農業生産に尽力するJAグループを可視化することは、担い手不足解消に貢献するとともに、JAグループの社会における存在意義を示す良い機会である。
併せて、JAグループ悪者論を唱える勢力に対する有効な反証行動となる。
(3)金融、販売購買等の全国機能を併せ持つJAグループは、全国連・地域JA連携した生産支援を面的に展開できる素地がある協同組合組織といえる。
(4)この取り組みが計画通り進んだ場合、「食料安全保障」確立すべしとの世論醸成に大きく寄与する。
4.支援形態の一案
全農が主体となって人的支援を行い、全農県本部中心に作成した支援策を実施
生産者・法人、地域JA、連合会(全農中心)相互の合意のもと、以下の支援形態が考えられる
・農作業受委託
・共同経営
・経営受委託
・直接経営 など
5.本稿を記した背景
(1)2007年からの規制改革会議、2013年からの規制改革推進会議を使って、農業分野での競争強化=農協弱体化⇒無力化が画策され、結果2016年4月農協法改正で『全中の社団法人化』『全農の株式会社できる規定盛り込み』が実現した。
*株式会社できる規定は、条文上「第73条の2 出資組合(貯金・提起積み金の受入、共済の事業を行う組合を除く)又は出資農事組合法人は、その組織を変更し株式会社になることができる」となっている。
(2)政府には、とりわけ全国連の力を弱め、業界とイコールフッティング化をすすめ淘汰の波に委ねる長期戦略の意図があり、その戦略が実現していくと協同組合メリットが損なわれる事態となる。
(3)2024年からのコメ不足・価格高騰現象でも、農協悪者論を主張する勢力が根強く存在する。
(4)退陣するものの石破内閣でコメ増産政策に舵を切ることを公表し、海外原料高、国内物価高、天候不安定などの要因で食料品の価格は加工・生鮮問わず価格高止まりの状態は長期化する見通しが大勢である。
(5)こうした状況をふまえると、JAグループの国内農業生産実支援の面的展開が可視化されれば、社会・国民の間に国内農業生産振興の必要性、食料安全保障確立の必要性の認識が高まるとともに、作り上げられた農協悪者・悪役イメージを払拭し、社会的存在としての評価を高めることができる
また、副次的効果として、生産者・法人、地域JA内にあるアンチJA勢力と親JA勢力間の融和促進機会となる
以上