社会観察雑記帳-市民感覚の何かおかしい㉖- 横浜IRの方向性素案に対するパブコメ投稿内容 通算投稿48回目

横浜IR(統合型リゾート)の方向性素案に対するパブリックコメント投稿

                               2020年3月20日

 

1. 横浜IRの方向性(素案)について
(1) 実現の背景として分析している「現状と課題」について

① 人口減少、高齢化(老年人口構成比の相対的増加)は、日本全国の自治体でも課題であり、横浜市は地方市町村に比べ、まだ生産年齢人口構成比は高い方である。

② 市財政の法人住民税が東京都の1/14との数字も示しているが、2010年代の推移は微減であり、今後の市の企業政策により大幅減は避けることが可能である。

③ 訪日外国人宿泊者数が全国平均より伸びが少ない、観光客の8割が日帰り客というデータは、東京隣接地という立地条件からやむを得ないものとして振興策を考えるべきで、外国人や国内観光客の宿泊を増やすためのIR、特にカジノ誘致は投資効果が期待できない。そもそも市財政からの投資試算は、パブコメ募集前に示されるべきものではないか。

(2) IR実現の効果について

① 観光振興で20~40百万人/年、外国人来訪者数4.2~13.6百万人/年とMINとMAXで大きな開きのあるデータを示すような甘い試算データで検討を進めることはリスクが大きい。TDRで30百万人/年、USJで15百万人/年の実績の中、横浜IR来訪者がMINでもUSJより多い20百万人/年を維持・拡大していけるという甘い認識は極めて問題。

② 地域経済の振興で示している建設時の75~120百億円のうち、市財政等税金から投入される試算が示されていない。また、IR全体の初期投資、途中の投資を全体でどう回収するかの計画も重要だが、市として投資するものをどう回収するかの試算・計画を示して市民の是非を問うことが必要である。

③ カジノに関して
ア. 横浜に進出したい事業者が提供するデータに頼った計画はリスクが大きい。市としての検証能力があるとは思えない。また、40年間撤退できない条項(途中撤退の莫大な違約金条項)、外国人と日本人来場者数試算、一人当たり賭け金試算なども示されていない。

イ. 財務改善として820~1200億円/年と総額データは示されているが、その内訳(納付金、日本人入場料、各種税納付額等)とその根拠が示されていない中で、計画の妥当性は判断できない。

ウ. そもそも、治安、依存症、マネーロンダリングなどの対策をしなければ実現できないカジノは不要である。カジノがなければ、諸対策も不要になる。また、カジノ事業者は外資が想定されており、掛け金の大半は日本人が支出するカジノ粗収益の70%を外資のカジノ事業者の収益とする構造は国益に合致しない。

④ 収支試算について
IR実現による定性的効果の記述は多く記述されているが、肝心の収支に関する数字データが示されていない。初期投資、途中での投資、ランニングコスト、想定収益などについて、事業体別(国、市、事業者等)、年次別収支試算とその試算根拠を市として示して、その妥当性含め議論すべきである。

2. 林市長の姿勢について
 林市長は、先の市長選挙でIR誘致に関しては「白紙」という公約で再選を果たしている。「白紙」=ニュートラルということで誘致とも非誘致とも旗色鮮明にしていないと屁理屈は成り立つが、市長選では多くの、いや、ほとんどの市民は「白紙」=非誘致と判断し、投票行動を行った。今になって誘致に舵を切ったことは、論理的には公約違反でないと強弁できても、市民感情や思いからは、林市長から裏切られた不信感しか残らず、こうした民意をそのままにIR推進を強行していくことはIR誘致失敗という未来しか招かないことを肝に銘ずべきである。

3. 日本型IR整備方針に対するそもそもの意見
 安倍政権が、国会での数の力で基本法、整備法と強行的に成立させ、自治体の立候補を待っている状況であるが、観光立国政策の目玉としていくら建前上の統合型リゾート整備政策と唱えても、所詮、アメリトランプ大統領の押し売り外交を官邸主導で通してきたカジノ解禁政策であり、日本に導入する動機、意義が極めて不純な政策と言わざるを得ない。
 ここ数年外国人訪日観光客は飛躍的な伸びを示しているが、これは各地の自治体等が創意工夫で日本の良さをアピールしている成果であり、こうした普段の努力こそがインバウンドの拡大には必須であろう。IRという間のカジノを数か所日本に設置することがインバウンド拡大に直接つながるものではなく、むしろ、カジノにより日本人資産の外資吸収、民営ギャンブル導入による社会変化など、日本社会への悪影響が大いに想定されるため、そもそも日本へのカジノ設置は反対であるし、ましてや地元横浜にカジノを設置してはならない。
                                    以上