社会観察雑記帳 -市民感覚の何かおかしい78-通算投稿122回目  信無き政を問う その3 食料安全保障

       信無き政を問う その3 食料安全保障                                                              

                             2023年4月29日記 

「民信無くば立たず」論語での孔子の教えで安倍晋三も演説で引用しているフレーズ(今でいう「おまゆう」の感はある)。


 *食料と軍備と信頼が政治をすすめる三要素だが、一番重要なのは為政者と民との間の信頼・信用関係だという教えのこと
 *食料、軍備、信頼の3要素の中でやむを得ず断念するとしたら何を先に断念するかと弟子子貢が尋ねると、孔子の答えはまずは軍備だと、その次は食料だと教えている

 

 安倍・菅・岸田と長期間続いている自公政権で、国民からの信は相当失っている現状と私は思っているが、岸田政権になってからの「信無き政」を指摘したい。
 岸田政権および与党自民党は、是非ここに掲げる普通の国民からの疑問、質問に判りやすく答えてもらいたい。

 掲げる項目を一覧化すると
1.    防衛費43兆円への増額の大義
2.    DX化の名のもとに薦める原子力発電所60年超稼働を可能とする根拠
3.    少子化対策の実効性
4.    統一教会解散請求実行の本気度
5.    総務省保存の放送法解釈変更経過文書から政権として軌道修正しない根拠
6.    予備費、政府基金活用手法の踏襲の大義・根拠
7.食料安全保障政策が無きに等しい

その3として以下に7.を記述する。

 

7.    食料安全保障政策が無きに等しい

 

 ①2023年現在世界人口は80億人を超えさらの増加トレンドにあること、②日本の貿易収支がかつてないほどに大幅赤字となり、我が国の経済・産業構造から、この赤字構造は恒常的となる予測が立つこと、③日本はもはやかつてのような先進国ではなく、一人当たりGDPも世界中位の普通の国となっていること、などなどから食料安全保障の観点からの日常的な食料確保対策が、軍備拡充対策より優先されるべき。論語孔子も教えている。


 にもかかわらず、岸田政権と現与党自民党は、軍備拡充対策の拡大・先鋭化を優先させている。これは、明らかに孔子の教えをはじめとする先人の教えを逸脱している愚行といえる。
 食料安全保障に関しては、農水省の検証について所感を述べる。

 

(1)    農水省食料・農業・農村基本法」見直し経過における食料安保関連


 農水省は2022年9月より上記基本法の見直しを審議会に検証部会を設置し、議論をすすめ、2023年6月の骨太方針への盛り込み、基本法の改定を目指している。
 その、エッセンスは、過去20年間の基本的考え方=「国内生産を基本として、輸入と備蓄を組み合わせて食料の安定供給を確保する」が、世界の食糧需給構造の激変をふまえた食料政策として有効か、有事の食料安全保障だけではなく貧困率上昇の事態もふまえて平時における国民の食料アクセスをどう確保するか等々の見直しをするというもの。


(2)2月24日の検証部会に提示された環境・情勢変化(13項目)に関する資料


  ①国際的な情勢変化と食料供給の不安定化
   ア.    世界人口の増加
   イ.    気候変動による異常気象の頻発による生産の不安定化
  ②食料供給および農業をめぐる国際的な議論の進展
   ウ.    食料安全保障に関する議論の進展
   エ.    環境をはじめとする持続可能性に配慮した農業・食料産業に関する議論
  ③国際的な経済パワーの変化と日本の経済的地位の低下
   オ.    輸入国としての影響力の低下
   カ.    経済的理由による食品アクセスの問題
   キ.    価格形成機能の問題
  ④日本の人口減少・高齢化に伴う国内市場の縮小
   ク.    国内市場の縮小
   ケ.    食料を届ける力の減退(物流問題)
   コ.    国際的な食市場の拡大
  ⑤農業従事者の減少と生産性を高める技術革新の進展
   サ.    農業従事者の急減と経営規模拡大の進展
   シ.    スマート農業・農業DXによる生産性向上
  ⑥    農村人口の減少、集落の縮小による農業を支える力の減退


(3)こうした情勢変化をふまえ基本法の基本的理念の見直し方向
  〇 食料安全保障の確立
  〇 持続可能な農業・食料産業への転換
  〇 生産性の高い農業経営の展開
  〇 農村のインフラ機能の確保


(4)基本法理念見直しの動きに対する所感
  1)食料安全保障に関する議論自体が遅い。20年間の農政の検証を今やっているこ  と自体、危機感がなかった表れであるし、そもそも基本法の条文で済ますのではなく「食料安全保障確保法(仮称)」のような独立した法整備が必要。
  2)そうはいっても、現時点での日本の立ち遅れの位置づけ分析や課題認識を提示し検証することは、有意義である。要は、この検証、見直し後の理念を国民に説得力ある説明で納得してもらうか、である。信無き政府にそれができるか。
  3)検証部会の「食料安全保障の確立」の理念方向では、「食品アクセスの改善」「食料安定供給のための総合的取り組み=備蓄の重要性」「海外市場も視野に入れた産業への転換」「適切な価格形成に向けたフードシステムの構築」の4方向が示されているが、それぞれ間違ってはいないが部分的な範囲の方向性であり、もっと基本中の基本の「国内生産〇%、輸入・備蓄〇%を実現するための平時・有事の政府の役割、国民の役割」といったものを打ち出すべきではないか。

 

「食料安全保障」というフレーズは政権や与党もよく使うが、その実、具体的な政策展開がなく、心もとない状況であることをよくかみしめ、民間の知恵も生かしながら、早急に食料安全保障の基本方針、実施具体策、実施体制等=食料安全保障確保法を整備する必要がある。(法案の名称は仮)