社会観察雑記帳 -この本この一節⑭-「新世界秩序と日本の未来」姜尚中・内田樹対談集 通算投稿99回目

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「新世界秩序と日本の未来」集英社、2021年7月21日第一刷 姜尚中内田樹対談集

                               2022年2月18日

 

 標題の本、政治学者の姜尚中先生と思想家の内田樹先生の対談集、3冊目だが、内田樹氏の的確な世界情勢認識、それをふまえた日本国家に対する提言が極めて的を射ているので、ここに紹介します。

 本自体は、主に東アジアを舞台に米中2大国家の分析、今後の世界動向予測を対談したあと、第5章で身の丈に合った日本に生まれ変わる必要性の提言をしている。

 この第5章での内田樹氏の考察・分析が心に刺さったので、以下転記します。

一節と銘打っていますが、5つの段落を引用します。(いずれも内田樹氏の発言)

なお、●印はブログ筆者のコメントです。

 

第5章 米中の狭間で、日本はどう生きるか から抜粋

 

〇 これからどうやって日本が縮んでいくかということは非常に重要なテーマになると思います。「小日本主義」でも「中規模国家」でもネーミングはいろいろですけれど、要は自分たちの正味の実力に見合った規模の国の形に落とし込んでいかなければいけないということは、まったく姜さんの言われる通り

  • G7、G20並みの経済成長復活などという絵空事提唱を直ちにやめ、身の丈に合った日本社会にする国民的コンセンサスをどうすれば醸成できるかが課題

 

〇 「最悪の事態」に備えるためには、現状の被害を正確に把握する必要があります。後退戦はまず被害調査から始まる。当然です~中略~

 それを調べると、「誰の責任か」という話になる。どういう制度設計上の瑕疵があったのか、どういう運用上のミスがあったのかという話になる。日本人はそれが嫌なんですよね。「そんなこともういいじゃないか。今は国家存亡のときなんだから、誰の責任だとかそういう野暮なことは言わずに、一致団結して国難にあたろう」という話に雪崩れ込んでしまう。

 

〇 政府の感染症対策の適否についての中立的な議論が行われていない。政府は「これまでの対策で特に問題はなかった」というだけで、反省とか自己点検ということを一切行わない。

 

〇 「和」とか「絆」とか「ワンチーム」とか、そういう言葉が日本人は大好きですけれど、後退戦でそういうフレーズが使われるというのは要するに「滅びるときはみんな一緒に」ということなんです

  • 上記3つの〇は、今まさに日本が新型コロナ対策の不手際で現実に起こっている事態であって、安倍・菅・岸田の直近政権の責任は極めて大きい。また、コロナ対策で言えば、厚労省感染症村を放置している政権の責任は万死に値する。

 

〇 東京裁判で検察官は25人の戦犯たちを尋問したあとに、全員が「この戦争を惹起することを欲しなかった」と証言したことに驚愕しています。証言によれば、戦犯たちは満州事変に反対し、三国同盟に反対し、日華事変に反対し、対米開戦に反対しながら、侵略戦争を遂行する政権内部で指導的地位にあり続けたというのです。そして、一度既成事実になった以上は、これを覆すことはできなかったと全員が異口同音に言い立てました。

 自分は個人的には反対だったけれど、「空気」には逆らえなかったという言い訳はいまでもあらゆる場所で聞かれます。こういうマインドセットは敗戦から75年経ってもまったく変わっていない

  • この東京裁判の戦犯たちの証言は日本人として恥ずかしい。権力中枢でもこの「空気」に支配される日本国家・社会の後進性を改善・改革するにはどうすればよいのか。