年金生活に入った普通の市民感覚の吐露(本・映画)ーこの本この一節 ⑧同調圧力 通算投稿22回目

       この本この一節 ―「同調圧力」 (角川新書)


                望月衣塑子 前川喜平 マーティン・ファクラー
                               2019年9月14日記

 久しぶりの投稿です。結果、夏休み明けのような形になりました。この本この一節から再開です。

 

 映画「新聞記者」の画面背景で行われていた著者3名の対談も後半に記載されている同書は、著者3名の日本社会の同調圧力の強まりを危惧した分担執筆の書である。
 映画「新聞記者」の原作である望月衣塑子著の同名新書をまず読んでみたが、彼女の官房長官記者会見での行動に至るまでの心情、信条、経験談であり、本ブログに採用する「この一節」がピンとこなかった。
 そこで、この「同調圧力」だが、望月氏のメディア内部・政治世界での危機意識、ファクラー氏の海外メディア視点での日本メディアの閉鎖性、権力おもねり姿勢などの異常性指摘とそれに対抗しない日本メディアの同調空気、と想像通りかつ的確な指摘は全面的に賛同する内容だった。前川氏の章では、文科省官僚の目からみた安倍政権の教育政策の危うさ(第1次政権時の教育基本法改正、第2次政権での道徳の評価教科化)に対する指摘も、極めてもっともであり、改めて現政権の危険性を知らしめる書といえる。

 しかし、前川氏は、官僚時代は面従腹背を旨に、政権の政策方向に異論がありながら、結果としては教育に対する政治の介入を許す事態を招いている、それを軌道修正する立場(初等中等教菊局長、事務次官)に就いたにもかかわらず現役時代は何もできなかったことは、国民の立場から言わせてもらえば、非難しなければならないし、現在の立場で軌道修正する努力を今後最大限行わなければならないと言いたい。事務次官にまでなった人であり、氏にいわせれば文科省内部の現役には、同じ考えの官僚も多いとのことだから。

 

この一節(実は四節:原文を端折った部分あり)
その1
 日本の公務員の仕事ぶりを揶揄する言葉として「遅れず、休まず、働かず」がある。この揶揄があてはなる公務員はかなりのマジョリティーとして存在している。
 驚きのエピソードがある。僕の同期がある部署に配属されたときに、上司から与えられた最初の支持が「どんな仕事が来ても、まずは『できません』と」言うように」だった。断りを入れたうえで「できない理由を考えろ」というのだ。
その2
 安倍政権下の2006年12月に成立した改正教育基本法。前文がすべて書き換えられ、教育の目標のひとつに「我が国と強度を愛する態度を養う」という愛国心教育が盛り込まれた。そして、教育は「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」という規定が削除されて、代わりに「この法律および他の法律の定めるところにより行われるべきもの」という規定が加えられた。「直接に」には教育内容への政治権力の介入を排除する意味を持っていた。「法律の定めるところにより」という言葉が入ったことにより、法律の根拠さえあれば、政治権力が際限なく介入できるかのように読める条文に変わってしまったのである。
その3
 2018年4月から全国の小学校で、2019年4月からは同じく中学校で完全実施された「特別の教科 道徳」だ。これまでとの大きな違いは、国が検定した教科書を必ず用いること、子供たちがどのように学んだのかを評価することだ。
(中略)
 「特別の教科 道徳」では、学習指導要領に定められた個々の徳目へと子供たちを誘導するように作られた教科書が使われている。文科省が言う「考え、議論する道徳」が180度変質してしまう恐れがある。「考え、議論する授業」が外から与えられた答えに自分を同化させていくプロセスになってしまう。
 これはとても怖いことだ。子供たち自身に議論はさせているが、それは結局子供たち自身が納得したうえで、あらかじめ設定された一つの価値観念に到達するよう誘導されてしまうのだ。
(中略)
 心の底から思い込ませる授業の進め方は、子供たちへの洗脳行為といってもいい。戦前の修身科の完全な復活へつながる。
その4
 安倍政権は保守的だとよくいわれる。保守とは、従来の制度や政策の継続性を重んじ、急激な変革ではなく斬新的中以前をすすめようとする姿勢や立場を指す。しかし、道徳教育を例にとってもよくわかるように、立憲主義を無視し、日本全体を右側へ、まさにドラスティックにひっくり返そうとしている安倍政権は保守的ではない。むしろ、右翼革命政権とでも呼ぶべき性質を持っていると思う。

 

 この一節ではなく、この四節、しかも各々長い節となったが、国家権力から抹殺されそうになった前川氏の文科官僚としての危機意識はもっと広範に共有されてよいと思う。
 教育は国の将来を左右する最重要事項といって良い。安倍政権はそのことをよくわかっていて、まさに10年、20年、50年戦略で国の形を自分たちの思う姿に変えていこうとしている戦略で教育変革をすすめていることを肝に銘じ、正しい変革なのか、誤った変革なのかの意思を示す行動が必要だ。

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