年金生活に入った普通の市民感覚の吐露(本・映画)ーこの本この一節③ー 投稿通し15回目

                               2019年7月18日


  五木寛之著 「孤独のすすめ」 中公新書ラクレ 初版2017年7月

 現役引退(2017年7月)半年後の正月のOB会合で、ある大先輩から薦められた一冊。
 読後、なるほど高齢者の仲間入りをする身にとって大変参考になる考え方が随所にある良書と感じた。特に現役引退前後の60歳代サラリーマンに薦める一冊。
(著者五木寛之氏は1932年生まれ、2019年で87歳)

(1) 私が一番薦める一節は、実は第1章「老い」とは何ですかの小見出し「何のために生きるか」の中に出てくる五木氏の答え『この世界がどう変わっていくのか見てみたい』です。
五木氏の半生期間では、史実でいえば戦前・戦後と日本・世界は大変化してきたが、五木氏は「世の中意外に大して変わっていない」という実感があるようで、もしかしたら10年・20年後に地球上で大変動があるかもしれず、それまで死ぬわけにいかないとの生き続けるうえでの「張り」があるとのこと。


(2) 自分自身を考えても、幼少の頃の高度経済成長期から、大学紛争、ソ連崩壊、バブル経済、低成長、政権交代など、社会・世界の大きな変化を現役組として経験し、今日に至っているわけだが、これからAI社会だ、憲法改正だ、自国第一だ、と叫ばれている昨今の世相がどうなっていくのか、この目で、この耳で確かめるまで生きていたいと願うのは正直な気持ちであり、五木氏のいう「生きていく張り合い」に全く同感できる。
(3) もう一つ、私のお薦めの一節は、「おわりに」にある「回想のすすめ」です。経験を多々積んできた高齢者だからこそ、回想の抽斗がたくさんあり、それをしょっちゅう開けて思い出すことが、新たな発見であったり、鬱予防になったり、肯定的な気持ちとなったり、と良いことだらけだと五木氏は言います。私自身も大いに実践しようと思います。


(4) お薦めの一節2つに絞って紹介しましたが、この本は「はじめに」から全6章+「おわりに」まであり、なかなかのボリュームですが、おもしろい、なるほどと感じるため一気に読了できます。第2章下山の醍醐味での人生の下山期こそ人生のクライマックスという考え方とか、第5章なぜ不安になるかでの現在が平安末期に似ている世相で、2020年終了後とか、原発事故の将来災害や収束見通しとか、参考になる記述が多々あることを添えておきます。

 

なお、「続・孤独のすすめ」も2019年3月に出ていますが、続編はピンとくるものが少なかった(なかった)のが正直な感想です。