年金生活に入った普通の市民感覚の吐露(本・映画)ーこの本この一節(特別編2)ー通算投稿20回目

   この本この一節(特別編2)―⑦映画「新聞記者」-

     原作 望月衣塑子 監督 藤井道人 主演 シム・ウンギョン、松坂桃李

                              2019年8月10日記
 

8月9日何十年ぶりかで映画館で映画を観た。スマホで予約し、シニア料金で安くなり、クレジットカードで決済し、席も広々で覚醒の感だった。
 鑑賞のきっかけは、大学時代の友人からの推薦の一言だった。原作の望月衣塑子さんは、東京新聞の記者で菅官房長官定例記者会見での出来事で有名になった方であるし、映画自体も6月公開時に少し話題になったことは承知していたが、友人の一言で観に行く気になったのは、望月衣塑子という若い記者魂に興味があったからに他ならない。

 

 映画自体は、加計学園問題を想起させる国家特区での医療系大学設置の闇をリークにより新聞社が知り、その真実を新聞社・内閣府を舞台に明らかにしていくサスペンス仕立てとしていて、なかなか脚本含め引き込まれるストーリーであり、特に内閣情報局の上司役の田中哲司さんの官僚ぶりが悪役感を十分発揮していたことが印象的であった。

 

 サイドストーリーとして、官僚による強姦事件を相手女性のハニートラップと見せる工作、自殺したリーク者を公金不正流用者に仕立てる工作を内閣情報局SNSやマスコミを使って行うことを描写している。


 サスペンスの誇張部分もあるにしてもありそうな気がするし、現実の安倍長期政権での出来事と照らし合わせると、官邸の有形無形の圧力に官邸の意向に沿って国家機関が動いていることは、さもありなんという気にさせる。一方で、原作者の現実の行動・言動自体が反安倍政権というレッテルであるため、随所に反安倍政権、反官邸の主張性が感じられ、トランプ大統領が広めたフェイクニュースというフレーズも頭に浮かぶ作りになっている。

―この一節―
 映画での最終盤で内閣情報局上司役(田中哲司)が主役(松坂桃李)に言った一言「この国の民主主義は形だけでいいんだ」

 主役(松坂)がなぜ先輩がリークしたか、リーク内容は真実かを知り、新聞記者(シム)が記事にした後で、上司(田中)にバレ、これ以上のリークへの協力をさせないやりとりのなかでのセリフ。逆説的な言い方だが、今の安倍政権が志向する国家像ともともと官僚が持っている上から目線の使命感を合体凝縮させた名セリフで、原作者、脚本家、監督は、「形だけでいいんだ」を許していいんですか、を問う作品にしたかったのだと感じた次第。
 上映館も上映回数も多くなく、宣伝をしているわけでもないので、観客動員数は伸びていないし、伸びないだろうが、いずれレンタル化などで家TV、PC等で見ることができる時が来るので、是非多くの人に観てほしい作品です。
 その時モリカケから時間は立っていても2015~2017年当時安倍政権がこんなことをしていた(のかもしれない)のか、これでよいのかと思いを巡らしてほしい。