「いずれにしても」と「必要な」のまやかし(政府の国会答弁) 社会観察雑記帳 ―市民感覚の何かおかしい㊼― 通算75回目投稿

  「いずれにしても」と「必要な」のまやかし(政府の国会答弁)

                               2021年2月4日記

 

 2月3日に感染症法、特措法等の改正案がわずか4日間の審議で成立し、2月4日から本予算案の審議で予算委員会衆議院)が始まった。

 これから、予算委員会はじめ各委員会での国会質疑・論戦が多々あることとなるが、政府答弁を理解するうえで答弁しているように見えて、ごまかし、すりかえ、はぐらかしのキーワードに、標題にある「いずれにしても」と「必要な」があるので、それについて記述してみたい。8年弱あった悪夢の安倍政権から横行していることで、上西先生が命名した「ご飯論法」とともに、国会論戦を検証する時に注意していると政府の本音が判断できる。

 

「いずれにしても」

  • 辞書の意味

広辞苑では、①どうなったとしても②いずれにせよ

デジタル大辞泉では、①どちらを選ぶにしても②事情がどうであろうとも=どうせ、どのみち③それはともかく、それはさておき

  • 国会答弁での政府側の使い方

話をずらす、そらす時の段落はじめの接頭語

話を抽象化する、ごまかす時の接頭語

ほとんどの大臣答弁で活用されているが、特に安倍・菅総理大臣、西村大臣、茂木大臣などが頻繁に使う。また、政府委員の答弁でも頻繁に出てくる。

  • 事例

  2月4日の衆院予算委員会でも菅総理が2回「いずれにしても」は使用した。

正確を期すために、国会が速記録を公開している1月14日参議院内閣委員会閉会中審査でのやりとりをここに記す。(質問者の質問は概略)

 

 (杉尾秀哉)

  緊急事態宣言の追加は考えていないのか。福岡小川知事いわく、「これが最後の  船」と迫られたとのことだが。

 (西村大臣)

  小川知事の発言は、勘違いだったとして発言撤回したと聞いている。

  「いずれにしても」私ども、日々全国の状況を確認しながら、それぞれの地域にどういう対策を取るべきか、これを様々なご意見をいただきながら日々対応しているところでございます。

 中略

  「いずれにしても」専門家の意見を聞いて、感染状況、医療の状態、公衆衛生の状況をしっかり把握しながら適切に判断をしていきたいというふうに考えております。

 *=「それはともかく」の意味で、質問者の期待する答弁ではなく、政府の考えをダメ押しする使用法

 

 (田村智子)

  医療・高齢者施設等での検査は厚労省が目安を示し、施設等の判断で検査を行える制度とし、その際診療報酬・介護報酬請求の仕組みも活用して国の直轄事業としてはどうか。

 (山本博司厚労副大臣

  行政検査に関しましては、実施主体は都道府県ですので、都道府県を介さない検査を行政検査とすることについては慎重な検討が必要であると考えている次第です。

  「いずれにしても」政府としては、必要なこの行政検査が迅速かつスムーズに行われるための検査体制の強化、これに関してしっかりと努力していきたいと思います。

 *=これも「それはともかく」で、質問者の趣旨を全く無視して従来通りの政府見解を述べる。この答弁では「必要な」まで活用している事例

 

「必要な」

  • 意味は省略しますが、肝心なのは誰が必要を判断するかであり、政府答弁で使われる場合には、「必要な」判断は政府が行うという意味であることを忘れてはならない。
  • 事例

PCR検査は、「必要な」検査は躊躇なく行います』という答弁を新旧総理大臣、新旧厚労大臣、西村大臣はじめ政府委員も何度も何度も言っています。これは、政府が必要とする検査=今までは症状の現れた感染疑いが濃厚な者や感染確定後の濃厚接触者など、政府が範囲を定めた者に行う検査、に限定されるということで、質問者が求めている検査数が質問者の思い描くように増えるということではない。

*「必要な」という修飾語がつくことにより、質問者の趣旨を断っている=ごまかしているということを、肝に銘じる必要があります。