社会観察雑記帳 -市民感覚の何かおかしい81- 通算投稿126回目 野村農水相の汚染水発言騒動で改めて福島第一原発の汚染水海洋放出の無責任さを問う 2023年9月2日記

野村農相相の汚染水発言騒動で改めて福島第一原発の汚染水海洋放出の無責任さを問う

                               2023年9月2日記

 

 2023年9月1日放送の大竹まことゴールデンラジオに、ジャーナリストの神保哲生氏が出演し、野村農水大臣の汚染水発言、そもそもの海洋放出判断の無責任さに関するコメントが大変当を得たものであった。

 

 曰く、処理水と呼ぶのは経産省記者クラブからの申し合わせだろうが、過去のBSE狂牛病)、通信傍受法(盗聴法)等と違い、市民レベルからの批判があることが怖い。過去のものは、実態は( )内の表現が正確だと分かっていて申し合わせ表現をメディアは使っているが、今回の処理水は世の中全般が処理水表現が正しく、汚染水表現は間違いとの認識が一般化しているのではないか。紛れもなく汚染水なのだが・・・
 また、海洋放出は政府の無作為のたまもの(12年間という期間に処理の選択肢が4つあったのに、それぞれについて何も検討を深めずに、また、50年100年の計を考えた判断をせずに敷地内をタンクで一杯にし、海洋放出が一番安易な方法であるのでそのお墨付きをIAEAからもらい、実行に移した。いわば、判断せず時間経過させた結果の事態が現在である。

 

 共同通信のスクープで、2022年1月段階でタンク内総量の約7割はトリチウム以外の放射性物質が基準以上に残存していることが判明している。これは、浄化装置の不具合や処理量を優先させた処理を行ったことなどが原因であったが、東電や経産省はこのデータを専門家小委員会には提出せず、ALPS処理後のデータのみ提出で海洋放出に誘導している。

 

 海洋放出以外の選択肢としては、大気放出、陸上大型タンク貯蔵、モルタル固化が挙げられているが、大気放出は環境への影響が未知数であることから賛成はしないが、陸上大型タンク貯蔵は、敷地内の7・8号機予定地にドーム型の施設をつくれば約48年分貯蔵できると計算されていること、モルタル固化も同じ敷地で約18年分隔離貯蔵できることから、充分検討を深めるに値する案であろう。
 廃炉事態は40年計画(2023年からは28年後)だが、現時点で40年で廃炉できると考えている専門家は皆無という。今日現在、デブリの抽出が1㌘も行われていない事実、技術革新の見通しなどから50年100年の計が必要なプロジェクトであり、汚染水発生がどれだけ続くのか全く見通しは立っていないのが現実ではないか。
廃炉への技術革新とともに、汚染水処理の技術革新も近未来には実現することを信じ、今は海洋放出ではなく、コストが少々かかろうとも隔離貯蔵の道を選ぶのが50年100年先を考える政治家が取るべき、判断すべきことではないか。

 

 東電は、事故当時メルトダウンを隠していた。また約7割のALPS処理水が基準値超えだった事実も隠していた。このようなところが、モニター結果でいくら安全だといっても信用はできない。政府も同様。約束を破って海洋放出を強行した政府のモニター結果を100%信用しろという方が無理である。海洋放出実施後もトリチウムの値だけ公表し、他の核種の数値は公表していない。

 

(参考)
ALPS処理水
汚染水を多核種除去装置等により、トリチウム以外の放射性物質を環境放出の際の規制基準を満たすまで繰り返し処理した水

汚染水
メルトダウンで溶けて固まった燃料デブリを冷却するためにかけ続けている水
雨水、地下水が原子炉建屋内に侵入し高い濃度の放射性物質を含んだ水

環境省
2022年1月現在の基準値超え処理水は、基準値未満になるまでALPSまたは逆浸透膜装置を使った浄化処理を行う
*いつ、どのくらい処理をしてデータはどうだったのかの公表はしているのか不明